ストック水槽は維持が大変
水草ストック水槽という言葉を聞いたことがありますか?そもそも水草水槽が何かを知らない人にとっては意味不明な言葉だと思いますが、これはその名の通り水草をストックしておく水槽のことです。“水草”を“ストック”?これでは何の説明にもなっていないので、本題に入りたいと思います。普段水草水槽を維持していると、必要になるのがトリミングです。トリミングとは、伸びすぎた水草を切る散髪みたいなことで、将来的に成長した姿を想像して刈り込む必要があるため、やり方はひとそれぞれ、センスを問われる作業だと言われています。では、切り取った水草はどうなるのでしょうか。捨てますか?もちろん捨てる場合もあるかと思いますが、水草はほとんどが切り戻し(植物の枝や葉などから新しい個体を増やすこと)で繁殖させることができるので、トリミングを行うことで切った水草はほかの場所に植えると再びそこで根付き、成長していきます。そのため、切った水草を別の場所に一旦移してあげることで、新たに水草のある水景を楽しむことができるわけです。もちろん、別の場所に移しておくことで病気の発生や突発的な事故により水草が全滅した場合でも、新しく水草を買いなおすことなく水草水槽の趣味を再開できるメリットもあります。ですが、やはり大きなデメリットはずばり「場所」を食うことです。トリミングの度に少なくない量の水草が生じるため、全て保存するためには本体と同じもしくはそれ以上に大きな水槽が必要になる場合もあるでしょう。場所の問題から水草ストック水槽を持てない場合、成長が早い水草はぽいぽい捨てても良いかもしれませんが、ブセファランドラの仲間など、成長速度が遅い水草を捨てるのは勇気がいりますし、何よりもったいないですね。そこで、楽して不急不要な水草を維持する方法として、最近流行りの兆しを見せているのが、水草の水上栽培です。
水上栽培とは?
水上栽培は水草を水中ではなく水上、つまり普通の草花と同じように生育させるやり方で、重量のある水槽を用意することなく、場合によってはベランダなどの外で水草を維持できるという報告も多くあります。水上栽培のやり方は多くの人がネット上に挙げているように、一般の園芸で使われるような花壇の土などに水草を植えることで、普段目にする草花のように水草を成長させることができます。ここで重要な点は、一般的に水草と呼ばれている植物は、水中と水上(水の外)ではその形が違っています。水中の姿そのまま水の外で成長するわけではなく、形態変化が起こるため、水草を水の外の鉢に植えたらOK、とはいきません。おそらく八割以上の水草は、自ら出してそのまま土に植えると干からびて枯れてしまうでしょう。実は、水上栽培を行うためには少しだけ「コツ」が必要なのです。これまでに数種類の水草の水上栽培を行った経験から、大事な水草を枯らさずに水上化する方法を書いていこうと思います。
準備
水草は水の外で生育できるとはいえ、半分水に浸かっているような場所や、水はけの悪い土の上などを生息域にしている水草が多いです。そこで、まずは湿度が十分保たれているような環境を作る準備をしましょう。水草の種類に応じて水を減らす、無くすタイミングが異なりますが、まずは完全に水に浸しておけば間違いありません。屋外であれば発砲スチロールの箱などが、屋内であればキッチントレーなどが安価で軽く、扱いやすいのではないでしょうか。それぞれの容器に2~5センチ程度の花壇の土、あるいは古くなったソイルを敷いて、水をなみなみ入れておけば大丈夫でしょう。
カバーが重要
上で書いたように準備したら、水草を放り込みます。植えても植えなくても良いです。そのまま放置すると徐々に水が蒸発するため、水面が下がっていくと思います。グリーンロタラなどの有茎草は1~2週間以内に水上化するのでそのまま放っておいても大丈夫です。水が完全に枯れるとダメですが、表面が乾いたくらいでは枯れません。ADAの侘び草でも最後まで生き残るのはこの種類じゃないですかね?その他の水草は、水が蒸発して水面から水草が顔を出したあたりでラップをかぶせてください。透明であればプラスチック、アクリルで良いと思います。密閉具合もそこまで気にしていません。きつきつにラップした場合、隙間が空いていた場合のどちらでもよく育ちます。この方法でうまくいくのがキューバパールグラスと、グロッソスティグマです。キューバパールグラスは、乾燥してしまうとすぐに枯れますが、カバーをするだけで簡単に絨毯になります。グロッソスティグマはカバーなしでもある程度乾燥に耐えてくれ、場合によっては何事もなく増えていくこともあります。ただし、突然調子を崩して枯れてしまうことがあり、そうなると復帰が難しいです。ちなみにグロッソスティグマの場合は肥料だけでなく、光量も多くないと機嫌を損ねるので、日の当たる窓際が定位置になっています。この方法で現在、ハイグロフィラポリスペルマも育てていいますが、順調に大きくなっているので大丈夫だと思われます。
より湿度を好む水草の水上化

水上化したあと
水上化に成功した水草は、少々の乾燥にも耐えるようですが、よほどのことがない限りはカバーをしたままの方が良い気がします。生息地域を考えると乾燥しても枯れないはずの植物もありますが、やはり人工的な環境では若干弱いのかもしれませんね。
水上化を上手く使ってコケ掃除
水槽を維持する上で、コケをどうやって退治するかは永遠のテーマではないでしょうか。お気に入りの水草がコケに覆われてしまい、他の水草に伝染する前に処分しないと、、、というのはよく聞く話です。コケが猛威を振るう水槽は何らかの問題を抱えている場合が多く、コケ掃除をしただけでは解決できないのですが、応急処置の一つとして水草の水上化という選択肢もあります。つまり、コケに覆われた水草を水槽から取り出し、適切な環境下で水上化してやることで、コケのついていない水上化した部分を再利用できる、ということです。実は、最初は水槽のミクロソリウムナローリーフがコケにまみれてひん死状態だったため、ダメ元で水上化を試してみました。するとコケは水中の葉だけで収まり、水上の葉へのコケの付着を防ぐことができたため、もしコケのせいで貴重な水草を捨てようと考えておられるならば、最後の手段として水上化を試してみるのはいかがでしょうか。
超簡単な種類
上では難しいと書きましたが、水から出して、そのまま水の外ですくすく育つ種類もあります。経験から簡単だったのは、ノチドメとヘアーグラス(ショート)の2種類です。この2種類は特に何も考えずに水から出して植えましたが、問題なく育ちます。これは例外でほかの種類の水草は枯れてしまったので、余っている水草以外はやらないほうが無難です。
まとめ
水草をストックしておく水槽を用意できない場合には水上化
水上化させるときにはカバーもしくは密閉
コケも除けて一石二鳥
例外的に超簡単な水草も
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