ブログタイトル


Saturday, September 14, 2019

ASUSのPC(U303XL)のCPUグリースを塗りなおしました

CPUグリース塗りなおしでパソコンの温度が下がるかも

パソコン(PC)を仕事に遊びに使っている人は大勢おられるとおもいますが、日常のお手入れはどうしていますか?日本ではもはや家電と呼んでも差し支えないほど普及していますが、実は他の家電とは異なりPCはメンテナンスが必要です。一番多いPCの問題が、本体内部に溜まるホコリです。PCのホコリは、溜まると排熱効率が低下し、CPUなどの温度上昇による動作の低速化が引き起こされます。さらに重要なのが、PCの発熱機関であるCPU/GPUの排熱を効率化するためのグリースの塗り替えです。詳細は本文を読んでもらえれば分かりますが、CPU/GPUを冷やすことがPCのパフォーマンスを維持するためには重要であり、その冷却の効率を高めるのがグリースです。もちろん、PCのカバーを開けるなどの操作は、場合によっては保証の対象外となるため保証期間内では推奨されません。ここでは5年ほど使った古いPCについてのメンテナンスについて紹介したいと思います。また、紹介している手前心苦しいところですが、自己責任での操作をお願いします。

PCカバーを開ける

PCのカバーは、多くの場合ネジで止められているだけなので、これまでの経験では比較的簡単に開けることができます。ただし、ねじの形状が特殊な場合もあるので、できればさまざまなネジに対応したドライバーセットを準備しておきたいところです。

例えばこういうの。

開けてみる

では、さっそく開けてみます。PCの内部にアクセスする場合は、静電気に気を付けてください。基盤むき出しの状態で、静電気が発生すると最悪基盤が破壊されます。壁などを触って静電気を逃がしてから作業してください。また、バッテリーが接続されている間は感電の恐れがあるので、極力金属部分には触れずに作業してください。今回メンテナンスするPCはASUSの5年くらい使っているUX303Lです。見えているネジを全部開ければ開く、、、かと思いきや引っかかって取れません。実は隠しネジがあるためです。ちょっと勇気がいりますが、普段使っている向きから奥側、写真上側のゴム足の裏に隠しネジがあるので、マイナスドライバーなどで慎重にゴム足を引っ張りだしてください。ゴム足は接着剤で固定されているので、べりべりと嫌な音がしますが、心を強く持って引きはがしてください。引きはがしたゴム足は、元通りにはめ込めるほどには接着力を維持しているので、ホコリがつかないように気を付けてください。ゴム足を外すと、その下にネジがあります。これを含めてすべてのネジを外せばカバーを開けることができます。ここでPCのメンテナンスのコツとして、ねじは大まかに外した位置に並べておく、ということを心がけています。皿などにネジを置いていくときに、大体でいいので外した位置関係を反映するように並べておくと組みなおす時に便利です。
裏側の写真。赤丸が初心者殺しの隠しネジの場所。

バッテリーを外しておく

まずは感電などの事故を防ぐために、バッテリーを基盤から外しておきます。写真の赤い四角で示すコネクターを外します。マイナスドライバーなどで隙間を上に持ち上げると外すことができます。
バッテリーと基盤の接続

中身にアクセス

実はこの記事、HDDからSSDへの換装という内容にしようと思っていたのですが、どうせここまでやるなら掃除まで案内した方が役に立つと考え、グリースの塗りなおしの記事にしました。SSDの換装はそこまで難しくなく、インターネットを調べるとやり方が紹介されている記事も多く見つけられます。コツとしてはHDDが乗っている台ごと外して交換することですね。あとはバッテリーのネジも外しておけばバッテリーの裏に入り込んでいるHDD台を外すことができます。ここでは省略しますが、気になる人は”UX303L、分解”などで調べてみてください。ちなみにHDDからSSDに換装すると実感で変化がわかるほどPCの動作がきびきびします。古いPCを使い続ける場合はぜひトライしてみてほしいです。
カバーを開けたところ。赤丸はHDDからSSDに換装するときに外すネジ。もっとあったかも。。。

グリースを塗り直し

多くの場合はここで掃除してまたカバーをして終了、となるのですが、せっかくなのでもうひと頑張りしてみましょう。写真のネジを外すと、2つのファンに向かって伸びているヒートパイプを外すことができます。外し方は写真の下側のヒートパイプを少し持ち上げると、写真上方向に向かってヒートパイプ全体が外れます。
ヒートパイプを外す。ネジを外したら少しだけ持ち上げて上方向に動かす

グリースを掃除して新しいのを塗りなおす

このUX303LというPCは、CPUのほかにGPUも搭載しているので、2つの部品がヒートパイプによって熱がファンの部分に運ばれて冷却される機構になっています。ヒートパイプを外すとおそらく紙粘土のようになったグリースがこびりついていると思います。ちなみにPCのCPU・GPUは恐ろしく発熱する部品であり、基盤上で冷却することは困難です。デスクトップPCでは可能な場合も多いのですが、ノートPCは部品が混みあっているため、普通は不可能です。そのためノートPCのCPUが発する熱は、ヒートパイプと呼ばれる熱伝導性の高い部品(多くの場合銅製)に受け渡された後に、PCの外部に向けて風を起こすファンによってPCの外に捨てられます。この機構においてグリースは、CPUなどの超発熱体とヒートパイプをできるだけ密着させ、熱を効率よく伝えるため役割を担っているため、グリースの性能はPCの性能を引き出すためにとても重要です。ただ残念なことに、グリースはセットされて3年くらい経つと乾き始めて、熱交換効率が低下するようです。こうなるとCPU/GPUが適切に冷却できず、PCの性能が事実上低下します。そのため、PCを長く快適に使うためには、グリースの塗り直しは重要なメンテナンスであるといえます。では、実際に塗り直しをしてみましょう。左上が外したヒートパイプの裏側、CPUとGPUに接している面、右下の赤い四角で囲っている場所がグリースを塗る必要がある場所です。紙粘土のようになってしまったグリースは、ティッシュなどである程度取り除き(完全に除こう、と肩ひじ張らずに、大体掃除できれば問題ありません)、新しいグリースをCPU(場合によってはGPUも)にたっぷり塗りましょう。グリースは一回使い切りのものが使いやすくて気に入っています。写真にあるようにヒートパイプをもとあったように載せて、もしその際にあまりにも多くのグリースがはみ出すようならば、ティッシュなどで取り除いてください。ただ、CPUグリースは絶縁体でできているので、そこまで神経質にならなくても問題はないようです。

例えばこういうの。

*ヨドバシカメラでは一個から送料無料で購入できました。
グリースをしっかり塗る

元通りに戻す前に

あとは外した手順を逆に進めるだけですが、せっかくですのでPCの中身全体をエアダスターなどで掃除しておきましょう。ホコリは冷却用のファン、ファンから出る空気の出口部分に特に多く蓄積しています。また、内部全体に満遍なく溜まっているホコリについても吹き飛ばしておきましょう。インターネットで調べると、筆や刷毛などを使って掃除をしている場合も見られますが、あれは分かっている人がやる操作です。初心者は大人しくエアダスターを使いましょう。静電気が発生してとても危険です。

最後に

PCのメンテナンスは、カバーを開ける、掃除をする、(できれば)グリースを塗り替える、抑えておけば十分だと思います。PCが壊れる前にこの3つを実践して、快適なPCライフを送りましょう。また、HDDからSSDの換装もしておけば、快速PCになること請け合いです。ASUSのU303XLは比較的簡単でしたが、この後同じようにグリース塗り直ししたマックブックプロは難易度が半端じゃなかったので、それも記事にしたいと思います。


Friday, September 13, 2019

テラベースを自作してみる(1)

テラベースを自作してみる

*筆者はテラベースという商品およびADAに敬意を持っています。今回は純粋に研究の一環としてその原理を知るために今回のプロジェクトを思いつきました。本文を読んでいただければわかりますが、テラベースの価格はかなり良心的であるため、自作するメリットはほとんどありません。興味のある方は、ADAの特約店でのご購入をおすすめします(ADA商品は通販では購入できません)。

テラベースとは?

テラベースという新しいアクアリウムの道具が発売されました。正確にはピバリウムと呼ばれる高湿度の環境に適応した植物、例えばコケやランなどをおしゃれに部屋に配置して楽しむためのツールですね。ADAのDOOAというブランドから発売されています。価格はおよそ3000円と、他のADA製品と比べると安価に手に入る商品になっているのではないでしょうか。

さて、このテラベースですが、コップのような形状になっており、そのコップの中に水を入れておくことで、中の水が外に染み出してくるという構造になっています。そうすることで染み出した水が表面のコケなどに供給され、徐々に成長させることができるようです。非常にユニークな発想ですが、”染み出す”というキーワードがひっかかりました。もしかしてこれって、素焼きの性質を利用している商品なのでは?

ご存じの方も多いと思いますが、素焼きの植木鉢などは水分を少しだけ通すことが知られています。その性質は乾燥を好むような植物を育成する場合には良い環境を提供できますし、逆に水分を長期間十分に保持したい場合にはコーティングしたりすることで水分の漏出を防ぐ必要があります。つまり上記のテラベースの性質はこの素焼きの鉢の性質と類似している点があると考えたのです。

作ってみました

材料たち
早速試してみました。購入したのは素焼きのハムスターの隠れ家(400円くらい)と、トンネルの片方を埋めるための耐水性のあるエポキシパテ(700円くらい)です。まず鉢底ネットをトンネルとほぼ同じ大きさに切りだしました。念のために2枚作製しました。この鉢底ネットにエポキシパテを塗り付け、ハムスターの隠れ家に固定します。およそ24時間で固まるそうなのでそのまましばらく放置しました。
鉢底ネットを設置
途中経過(左)と完成品?(横、底、上から見たところ)

完成・・・?

とりあえず現時点での感想は、「コレジャナイ」の一言です。見た目が本物と似ても似つかない、ひどいオブジェができてしまいました。作っているときには、「どのみちコケに覆われるし、色が違っていてもまあいいか」という軽い気持ちでやっていたのですが、いざ完成品を目の当たりにするとかなり引きますね。大きさが違うからなどという言い訳は通じません。やはりADAの商品はスタイリッシュです。

マネというのもおこがましい(右は本物)

実験スタート!

何はともあれ、当初の目的である「テラベースは素焼きの性質を利用している」という仮説を検証するために、自作の地獄オブジェと、本家本元のテラベースに同じようにウィローモスを巻き付け、育成を開始します。

Saturday, September 7, 2019

水草を水上栽培で維持するコツ


ストック水槽は維持が大変


水草ストック水槽という言葉を聞いたことがありますか?そもそも水草水槽が何かを知らない人にとっては意味不明な言葉だと思いますが、これはその名の通り水草をストックしておく水槽のことです。“水草”を“ストック”?これでは何の説明にもなっていないので、本題に入りたいと思います。普段水草水槽を維持していると、必要になるのがトリミングです。トリミングとは、伸びすぎた水草を切る散髪みたいなことで、将来的に成長した姿を想像して刈り込む必要があるため、やり方はひとそれぞれ、センスを問われる作業だと言われています。では、切り取った水草はどうなるのでしょうか。捨てますか?もちろん捨てる場合もあるかと思いますが、水草はほとんどが切り戻し(植物の枝や葉などから新しい個体を増やすこと)で繁殖させることができるので、トリミングを行うことで切った水草はほかの場所に植えると再びそこで根付き、成長していきます。そのため、切った水草を別の場所に一旦移してあげることで、新たに水草のある水景を楽しむことができるわけです。もちろん、別の場所に移しておくことで病気の発生や突発的な事故により水草が全滅した場合でも、新しく水草を買いなおすことなく水草水槽の趣味を再開できるメリットもあります。ですが、やはり大きなデメリットはずばり「場所」を食うことです。トリミングの度に少なくない量の水草が生じるため、全て保存するためには本体と同じもしくはそれ以上に大きな水槽が必要になる場合もあるでしょう。場所の問題から水草ストック水槽を持てない場合、成長が早い水草はぽいぽい捨てても良いかもしれませんが、ブセファランドラの仲間など、成長速度が遅い水草を捨てるのは勇気がいりますし、何よりもったいないですね。そこで、楽して不急不要な水草を維持する方法として、最近流行りの兆しを見せているのが、水草の水上栽培です。 

水上栽培とは?


水上栽培は水草を水中ではなく水上、つまり普通の草花と同じように生育させるやり方で、重量のある水槽を用意することなく、場合によってはベランダなどの外で水草を維持できるという報告も多くあります。水上栽培のやり方は多くの人がネット上に挙げているように、一般の園芸で使われるような花壇の土などに水草を植えることで、普段目にする草花のように水草を成長させることができます。ここで重要な点は、一般的に水草と呼ばれている植物は、水中と水上(水の外)ではその形が違っています。水中の姿そのまま水の外で成長するわけではなく、形態変化が起こるため、水草を水の外の鉢に植えたらOK、とはいきません。おそらく八割以上の水草は、自ら出してそのまま土に植えると干からびて枯れてしまうでしょう。実は、水上栽培を行うためには少しだけ「コツ」が必要なのです。これまでに数種類の水草の水上栽培を行った経験から、大事な水草を枯らさずに水上化する方法を書いていこうと思います。 

準備


水草は水の外で生育できるとはいえ、半分水に浸かっているような場所や、水はけの悪い土の上などを生息域にしている水草が多いです。そこで、まずは湿度が十分保たれているような環境を作る準備をしましょう。水草の種類に応じて水を減らす、無くすタイミングが異なりますが、まずは完全に水に浸しておけば間違いありません。屋外であれば発砲スチロールの箱などが、屋内であればキッチントレーなどが安価で軽く、扱いやすいのではないでしょうか。それぞれの容器に2~5センチ程度の花壇の土、あるいは古くなったソイルを敷いて、水をなみなみ入れておけば大丈夫でしょう。 

カバーが重要


上で書いたように準備したら、水草を放り込みます。植えても植えなくても良いです。そのまま放置すると徐々に水が蒸発するため、水面が下がっていくと思います。グリーンロタラなどの有茎草は1~2週間以内に水上化するのでそのまま放っておいても大丈夫です。水が完全に枯れるとダメですが、表面が乾いたくらいでは枯れません。ADAの侘び草でも最後まで生き残るのはこの種類じゃないですかね?その他の水草は、水が蒸発して水面から水草が顔を出したあたりでラップをかぶせてください。透明であればプラスチック、アクリルで良いと思います。密閉具合もそこまで気にしていません。きつきつにラップした場合、隙間が空いていた場合のどちらでもよく育ちます。この方法でうまくいくのがキューバパールグラスと、グロッソスティグマです。キューバパールグラスは、乾燥してしまうとすぐに枯れますが、カバーをするだけで簡単に絨毯になります。グロッソスティグマはカバーなしでもある程度乾燥に耐えてくれ、場合によっては何事もなく増えていくこともあります。ただし、突然調子を崩して枯れてしまうことがあり、そうなると復帰が難しいです。ちなみにグロッソスティグマの場合は肥料だけでなく、光量も多くないと機嫌を損ねるので、日の当たる窓際が定位置になっています。この方法で現在、ハイグロフィラポリスペルマも育てていいますが、順調に大きくなっているので大丈夫だと思われます。 

より湿度を好む水草の水上化


キューバパールグラス、グロッソスティグマ、ハイグロフィラポリスペルマについてカバーしさえすればよいと書きましたが、カバーだけでは不十分な水草もあります。特に陰性と呼ばれる水草は湿度がかなり高くないとしおれてしまうようです。試したのはアヌビアスナナとミクロソリウムの仲間、そしてアマゾンソードですが、これらは軽くラップをした程度の環境では数時間でしなびてしまい、そのまま枯れてしまいました。ですが、少なくともミクロソリウムの仲間は密閉したガラス瓶の中で少しずつ成長していきます。おそらくほかの2つも密閉環境であれば水上に適応できるのではないでしょうか。そのため、貴重な水草の水上化を試す場合には、まずは密閉できる瓶などで湿度を高く保ちながら水上化するのが良いのかもしれません。また、密閉まではいかなくとも、小瓶などにコケを植えて楽しむコケリウムというものがありますが、この環境であればハイグロフィラピンナティフィダも順調に成長しています。コケリウムに、水槽にあったハイグロフィラピンナティフィダをそのまま入れておいたところ、水槽の中(CO2なし)よりも早く育つようです。このように、周りに湿度を保つことのできる他の植物などを配置することで、軽く蓋をした状態でも水上化できる場合もあります。 


水上化したあと


 水上化に成功した水草は、少々の乾燥にも耐えるようですが、よほどのことがない限りはカバーをしたままの方が良い気がします。生息地域を考えると乾燥しても枯れないはずの植物もありますが、やはり人工的な環境では若干弱いのかもしれませんね。

 水上化を上手く使ってコケ掃除


 水槽を維持する上で、コケをどうやって退治するかは永遠のテーマではないでしょうか。お気に入りの水草がコケに覆われてしまい、他の水草に伝染する前に処分しないと、、、というのはよく聞く話です。コケが猛威を振るう水槽は何らかの問題を抱えている場合が多く、コケ掃除をしただけでは解決できないのですが、応急処置の一つとして水草の水上化という選択肢もあります。つまり、コケに覆われた水草を水槽から取り出し、適切な環境下で水上化してやることで、コケのついていない水上化した部分を再利用できる、ということです。実は、最初は水槽のミクロソリウムナローリーフがコケにまみれてひん死状態だったため、ダメ元で水上化を試してみました。するとコケは水中の葉だけで収まり、水上の葉へのコケの付着を防ぐことができたため、もしコケのせいで貴重な水草を捨てようと考えておられるならば、最後の手段として水上化を試してみるのはいかがでしょうか。

 超簡単な種類


上では難しいと書きましたが、水から出して、そのまま水の外ですくすく育つ種類もあります。経験から簡単だったのは、ノチドメとヘアーグラス(ショート)の2種類です。この2種類は特に何も考えずに水から出して植えましたが、問題なく育ちます。これは例外でほかの種類の水草は枯れてしまったので、余っている水草以外はやらないほうが無難です。 

まとめ


 水草をストックしておく水槽を用意できない場合には水上化
 水上化させるときにはカバーもしくは密閉
コケも除けて一石二鳥
例外的に超簡単な水草も


Monday, June 17, 2019

フィルターの選び方

水槽には必ずと言っていいほど何らかのろ過装置(フィルター)が設置されます。有名どころでは「ぶくぶく」と呼ばれる水作やロカボーイといった投げ込み式がありますが、それ以外にも多くの種類のフィルターが、それぞれ大小存在しています。

フィルターの種類が多い理由として、アクアリウムという趣味の多様性を示しているのではないかと思います。つまり、それぞれのアクアリストが求める環境が多様であり、飼育環境に合わせてカスタマイズする必要があるということです。そのメリットは逆に、初心者あるいは特定の生き物だけを飼育してきた人にとっては、この種類の多さは混乱を招くこともあるかと思います。何を飼うには何のフィルターを使うのか、とにかく教えてほしいという場合には非常に困ることでしょう。ですが、大げさに言ってしまえばフィルターの種類の多さは先人たちの知恵の結晶であり、あらゆる水槽内で起こるであろう問題に対して立ち向かう武器だと思ってください。その一方で、大して問題がなければ何を使っても良いので、まずは安価な物からスタートするのも手です。
ではどのフィルターを使うのが良いのか、という話の前に、まずはフィルターの役割について科学的な面も含めて説明したいと思います。


フィルターの役割


フィルターというのは多くの種類がありますが、究極的な役割としては2つに集約されます。その2つのろ過について具体的に説明します。


1. 物理ろ過:

その名の通り(?)、ごみやフンなどの目に見えるくらいの大きさのごみを物理的に濾し取るろ過です。茶こしと同じ原理で、網目状の綿や繊維をパイプやホースの様な管の中に固定し、その中を水槽の水が通るようにすることでごみを除きます。やはり水槽はごみが浮いていたり、濁っているよりは透明で澄んだ水の方が見栄えがいいですよね。肉眼で透明な水を作り出すためのろ過が物理ろ過になります。物理ろ過はその性質上、見た目にごみが取れる以上に、もう一つのフィルターの役割である生物ろ過に重要な場合もあります。


2. 生物ろ過:

ろ過の役割としてはこちらの方が重要になります。生物ろ過の「生物」というのは水槽に自然に発生して生育する細菌類(バクテリア)を指しており、フィルター内にバクテリアを住まわせることで、水槽内で発生する有害な窒素代謝物(アンモニア、一酸化窒素)をある程度無害な二酸化窒素に変換する役割を持っています。一見単純な原理に見えますが、水槽内の環境維持にとって必須のろ過です。ごみは網ですくって取り除けますが、窒素代謝物はやはりバクテリアの力を借りなければ短時間で高濃度になってしまい、魚やエビなどのタンクメイトの寿命を縮め、場合によってはすぐに死亡してしまいます。生物ろ過はイメージしているろ過とは異なりますが、水槽を維持していく上では欠かせない性質ですので、透明な水を作りさえすればろ過はOK、とはならないことを特に頭に入れておいてください。


フィルターの種類について


次に世の中に出回っている一般的なフィルターについて説明します。上の2つのろ過を念頭に読んでもらえると分かりやすいと思います。


1. 投げ込み式フィルター:

金魚の飼育キットなどに含まれる一番安価なフィルターです。ぶくぶくなどと呼ばれることが多いですね。ぶくぶくという名前は、投げ込み式フィルターは必ずエアポンプに接続して用いられるので、空気の泡がぶくぶく出ていることに由来するのでしょう。このフィルターはエアポンプで送られる空気が上に上昇する力を利用して、水槽の水を強制的に投げ込み式フィルター内に送り込みます。送り込まれた水は、大きなごみがフィルターに濾し取られることできれいになりますし、しばらく使ったフィルターにはバクテリアが住み着いていることが期待できるので、アンモニアなども分解されます。投げ込み式フィルターは見た目が単純でしかも安価であるため、ろ過能力は弱いと思われがちですが、実は侮れない力を持っています。ただし、水槽の大きさに対するろ過面積、体積が小さいことが多く、これだけで十分なろ過能力を発揮させるためには、複数個での運用が必要になるでしょう。それはあまりに見た目を損なうので、投げ込み式フィルターと別のろ過を組み合わせる、あるいはこまめな水替えをして対応するのですが、後者では「楽して」維持するというコンセプトから外れることから、別のろ過との併用が良いでしょう。


2. 外掛けフィルター:

投げ込み式フィルターの次にメジャーなフィルターでしょう。外掛けという名の通り水槽の壁などに引っ掛けて利用します。外掛けフィルター装置にはポンプがついているため、水槽の水を一部くみ出し、装置内の使い捨てフィルターまで水を送ります。そしてその水はフィルターを通過して大きなごみが濾し取られ、さらに窒素代謝物が分解・変換された後に元の水槽に戻されます。外掛けフィルターは、使い捨てのフィルターユニットが簡単に交換できるため運用しやすく、さらに見た目もそこまで悪くないので初心者にはうってつけです。弱点としては、水槽の壁、つまりガラス板に引っ掛けるので強度の問題から大型化が難しく、どうしても容量が小さなものになります。そのため、単位時間に処理できる水の量は、後で説明する外部フィルターと比較すると見劣りします。ですが、少数の生体を維持するような水槽でしたら、トータルバランスに優れるフィルターです。


3. 上部フィルター:

一昔前にはこのフィルターが主流だったかと思います。上部フィルターは水槽の上にフィルターユニットを設置し、水槽の水をポンプでくみ上げてフィルターに上から注ぎ込むことにより、大きな汚れを除く目的で使われます。最近では、物理フィルターだけでなくろ材を設置することで生物ろ過も期待できるタイプのものも多く出回っています。また、改造して用いる人も多く、単純ゆえに応用が利くフィルターだと言えます。特に、ドライ式と呼ばれる循環システムは、上部もしくはオーバーフローでないと運用が難しく、強力な生物ろ過を好む水槽で、オーバーフローまで行う必要のない大きさであれば、改造した上部フィルターが活躍することでしょう。改造までせずとも強力な物理ろ過、単純な仕組み、ろ材の交換しやすさ、さらには機種を選べば生物ろ過も可能であるため、長期運用向きではあるのですが、弱点も存在します。特にその見た目のゴツさは水槽全体の印象を変えてしまうほど強力です。金魚など水を汚す魚などでは真価を発揮しますが、そこまで強力な物理ろ過を必要としない魚種であればなるべく避けるほうが無難かもしれません。また、水草水槽との相性は悪く、せっかく導入した炭酸ガスが抜けてしまうため、効率よく水草が育ちにくいようです。ちなみに上部フィルターはほとんどの種類が枠あり水槽限定ですので、最近の水草水槽に代表されるインテリア性の高い枠なし水槽では、そもそも設置できない場合が多いです。


4. 外部フィルター:

長期的に水槽を維持しようと考えれば、第一候補に挙げるフィルターです。外部フィルターも他のフィルターと同様にポンプで水流を作り出して水槽の水をフィルターユニットに流し込むのですが、外部フィルターの特徴はその容量の大きさです。例えばエーハイムクラシック2213と呼ばれる機種では3Lものろ材が詰め込めるため、かなり強力な生物ろ過が期待できます。水草水槽のようなろ過自体は強力に行う必要がないものであっても、ろ過中に水槽の水が外気に触れないために炭酸ガスが抜けにくく、原理的に無駄が少ない構造をしています。ただし、外部フィルターはほかのフィルターシステムと比べて価格が高く、初心者がいきなり買うのを躊躇する値段です。おそらくどの機種でも最低5000円はくだらないと思います。水槽自身よりも高いのが当たり前の値段です。また、配線の取り回しの難しさや、ホースが抜けることによる水漏れの危険もあるため、できればある程度水槽を維持することに馴れてからチャレンジして欲しいフィルターでもあります。ですが、ろ過能力の高さは折り紙付きで、水槽の改造を伴わないろ過システムとしては最高のものだと考えています。




5. オーバーフロー(単なるフィルターではなくシステム):

オーバーフローは少し特殊なフィルターで、外部フィルターのろ材を詰めるユニットを別の水槽に置き換えたようなシステムです。水槽から直接別の水槽に水を移動させ、その別の水槽には物理・生物ろ過に優れるろ材をこれでもかと詰め込みます。そしてポンプで再び水槽に水を戻すことで、全体としてろ過された水を循環させています。最近ようやく個人でもオーバーフロー水槽を維持できるセットが販売されるようになりましたが、以前はガラス水槽の底に穴をあけてそこに塩ビ管などを通すといった手間をかけて作成していたようです。特に塩ビ管とガラスの穴をきちんとシーリングできない場合、水漏れが発生するため個人で維持するのは難しかったのではないかと思います。ただし、オーバーフロー水槽のろ過能力は群を抜いており、水槽と同じ、もしくはそれ以上の大きさの濾過槽を備えることで、他のろ過装置よりも大きな能力を発揮できます。海水水槽などの汚れやすい水槽ではデフォルトで使用されているようです。


6. 底面フィルター:

底面フィルターは、極めて単純な装置で運用されるフィルターですが、それ自身がフィルターとして機能するわけではなく、ソイルや大磯砂などいわゆる底砂に汚れを吸収させたり、底砂にバクテリアを住まわせたりすることでろ過するシステムです。底面がほぼ全てろ材として機能するため、ろ過能力は高い部類に入ります。原理の前に設置方法を説明すると、水槽の底に底面フィルターユニットである板を敷き、その板をソイルなどの底砂で隠すようにかぶせます。底面フィルターの板の一部には管が接続されており、底砂をかぶせた後はその管だけが底砂から生えているようになります。この管にエアポンプなどから空気を送り込むチューブを、エアストーンなどで一番底の方まで設置すると完成です。なぜこれがフィルターとして機能するかというと、底面から伸びた管に空気を送り込むことで、空気の泡とともに上昇する方向の水の流れが生じます。これは投げ込み式フィルターの場合と似たような仕組みです。そして発生した水の流れが水槽の水を強制的に底砂に呼び込むため、その結果底砂全体がフィルターとして機能します。ろ材の体積はろ過能力とほぼ比例するため、ろ過としては申し分ないのですが、一度設置するとレイアウトの変更ができないという大きなデメリットがあります。レイアウト再構築のためには水槽のリセットが必要になるため、設置は慎重にする必要があります。また、底砂から伸びている管も景観を損ねるなど、気になる人はいるかもしれません。また、もちろんこまめな底砂の掃除も必要となるため、フンや食べ残しの多い環境では見た目以上に水槽全体としての汚れが蓄積している可能性もあります。例外的に沈殿槽と呼ばれる空間を水槽の最下段に作ることで、エビなどの力を借りてごみをその空間に落とし込み、バクテリアなどによる緩やかな分解を待つことで、メンテナンスフリーの水槽を維持している方もおられるので、参考にしてみてください。


7. 流動フィルター:

流動フィルターは完全に生物ろ過に特化したフィルターです。仕組みとしては小さな外部フィルターのようなものですが、ろ過体積はおよそ50mL程度と小さく設置しやすい大きさです。水槽に引っ掛けて使うので、外部というよりは外掛けのようですが、密閉式なので外部に近いと思います。ろ過体積の小さな外部フィルターであれば単なる廉価版であると思われるかもしれませんが、流動フィルターの効果は意外と高いようです。試したことはないのですが、原理的には理想的な生物ろ過を備えていると考えられるため、レビューなどで高評価を得ているのではないでしょうか。なぜ理想的な生物ろ過になるのかと言いますと、まず流動フィルターの名前の由来である流動、つまり動いている部分がろ材そのものになります。ここまでは省略してきましたが、実は生物ろ過の能力の高さは、バクテリアが住みよい環境かということに依存します。例えばバクテリアの数が多くても、酸素が少ない環境では分解スピードも低下し、ろ過能力が発揮できません。上で紹介した流動フィルター以外のフィルターは、何らかの形でろ材を一か所に固定してしまっています(改造したフィルターを除く)。その結果どうしても止水域と呼ばれる水の流れが滞った場所が生まれてしまいます。止水域では酸素の供給あるいは、分解させたい窒素代謝物の循環が悪くなっているため、ろ過能への寄与は小さくなります。もちろん、ろ材の量を減らしたりするなどの工夫はありますが、完全にコントロールすることはまず不可能でしょう。つまり固定されたろ材のろ過能力は、本来発揮できる能力よりも限定されていると考えられるのです。一方で流動フィルターはつねにろ材が流動しており、ろ材が常に最大効率で水と接していることになります。そのため、ろ材の力をほぼ100パーセント余すことなくろ過に用いていると言えるでしょう。これが、他のフィルターよりも小さな体積で十分なろ過能を発揮できるとされている理由になります。また、ろ材が水と同じくらいか少し大きい程度の密度、重さであるためエアーポンプなどの流れで容易に水中を舞う様子も見ていて面白く、そのような楽しみ方もあるフィルターです。残念ながら物理フィルターとしての能力はゼロですので、汚れを取るためには必ず別のフィルターを設置する必要がある点、ろ材が汚れると見苦しくなる点、そしてフィルター自体が高価である点が弱点と言えます。ですが、やはりフィルター自体の挙動が面白いというのは他のフィルターに見られない点であり、評価は高いです。


まとめ


以上7つのフィルターについて紹介しました。と言ってもどのフィルターにすればいいのか、という疑問には全く答えていないと思われたかもしれません。最初に述べたように、どのフィルターするべきかというのは水槽の大きさや飼育する生き物の種類、数によって全く異なるので一概に決めることができません。ですが、30センチキューブハイタイプ水槽で、下層や中層を泳ぐ小魚を10匹くらい飼育する水槽で、水草は難しい種類は入れない、というかなり限られた条件でかつ、予算に余裕があればエーハイム2213を使ってください。ろ材はろ材セットのものを購入して、そのセット品を説明書通りに設置すると完璧です。水流が強すぎる場合はリリーパイプを接続して勢いを緩めてあげれば、ほとんどの魚を飼育することが可能です。その他底砂やヒーターなどは魚に合わせたものを入れれば何でも大丈夫です。
(すてきらんばい)



Sunday, June 16, 2019

水槽の維持のコツ

水槽は日々状態が変わるものですが、毎日pHを測定したりすることで完璧に維持し続けるのは、一人暮らしのサラリーマンなどでは難しいことだと思います。

でも水槽を持つことは生活の癒し、手放したくないという人は多いかと思いますし、アクアリウムを始めてみたいけど、日々の手入れが大変ならやめとこう、、、と思っている人もいるかと思います。 

そこで、毎日水槽の手入れをしたくない人、あるいは始めたいけど続ける自信が無いという人向けに、自分の経験から水槽をいかに楽して維持し続けるかをご紹介したいと思います。


水槽の大きさ

アクアリウムを趣味として行うためには、どのような形であれ水槽が必要ですね。でも水槽と一口に言っても大きさはもちろん、素材にも種類があるため、初心者にはどれを選べばよいか、分かりにくいと思います。水槽の大きさ選びの原則として、大きな水槽ほど水質が安定するため初心者向きである、と言われています。つまり、極端なことを言えばプールで金魚一匹を飼うとすると飼育は簡単で、予算と場所が許せば大きな水槽を持つことが管理の手間を省く秘訣です。

ですが、結論から言うと初心者がまず始めるのに適しているのは、30センチキューブ水槽のハイタイプです。ちまたでは60センチ規格水槽が最も初心者向けであると言われていることが多いですが、私は今まで60センチ規格水槽を使ったアクアリウムをやったことはありません。残念ながら部屋の広さが、、、(泣)。ですが、狭い部屋を色々とやりくりすると、30センチキューブ水槽を置くスペースくらいは確保できたため、できるだけ大きな水槽を設置したいという欲求と、居住スペースの確保の妥協点の模索の結果が30センチキューブになりました。消極的に見えるかもしれませんが、結果的に選んだ30センチキューブで正解だったと思っています。その理由について次に説明します。

30センチキューブという水槽は、アクアリウムをやったことがない人にとってイメージしにくい水槽です。いわゆるフツーの水槽というと、直方体がイメージされると思いますが、キューブという名の通り、立方体になっています。ちなみに、直方体の水槽が多いのには理由があります。それは、直方体の水槽は長軸側から観察するという大前提があり、水草や魚を一番よく見えるように設置すると、自然と壁際になるためです。水槽は壁際に設置して、周りに棚や壁があるのがこれまでの当たり前の風景でした。そのイメージから水槽と言えば直方体になったのではないかと思います。ですが、ここでオススメするキューブ水槽は長軸が存在しないため、自由な設置の仕方が可能になるのです。つまり水草などの水槽内レイアウトが見る方向も自由に変更した形で作成することができるという魅力があります。場合によっては、普段観察する面を「角」とすることも選択肢の一つとして取り入れることもできるのです。さて、レイアウトの汎用性はさておき、キューブ水槽は同じ30センチというスペースを活用する際には、直方体の規格水槽と比べておよそ2倍の水量となります。当然重くもなりますが、上で書いたように、水の量が多いことは水槽安定化のキーになります。30センチ規格水槽と同じレイアウトを採用したとしても水量が稼げる上に、奥行きのあるレイアウトを作ることも可能な点が魅力です。また、さらっと「設置」と言いましたが、30センチキューブ水槽はいい感じの水槽台も豊富です。少し高額になる場合もありますが、インテリア性の高い水槽台もあるため、変な表現ですが、いかにも水槽という感じを減らすこともでき、理解のあまりない家族からの視線も和らぐのではないでしょうか。

30 cm キューブハイタイプのレイアウトの例
30センチキューブの「ハイタイプ」と書いていたことを覚えていますか?ハイタイプというのは、高さだけが40ないし45センチ程度になったキューブ水槽で、厳密には立方体ではありません。これは30センチキューブ水槽が完全な立方体であるため、水槽の底面にソイルや大磯砂を敷くことで実質20センチくらいが利用可能な空間になってしまうことを防ぐためです。ベアタンクと言って、生体以外を全く入れないレイアウトであれば賞味30センチ利用可能になるのですが、初心者がベアタンクを維持できるかというと、かなり難しいと思います。普通はソイル、場合によっては大磯砂などを底面に敷くことで、水の状態を安定化出来たり、底面フィルターのろ材として用いることになります。あとは、これは好みと言えばそうなのですが、縦長の方がすっきりしたレイアウトに見えること、さらには水量の増大による安定化が見込まれるため、あえてハイタイプをオススメします。高さを生かすという意味ではより大きな45センチキューブというものもありますが、多分自分一人で運べないんじゃないかと、、、。30センチキューブハイタイプくらいが、一人で持ち運んで風呂場などで洗う限界の大きさがこの辺りになるのもポイントだと思います。



まとめると、初心者あるいは最低限度の手間で水槽維持をしたいと考えている人に向いているのは30センチキューブ水槽のハイタイプです。もちろん、これ以下の水槽も維持している方は多くおられることだと思いますが、「楽して」という観点から最もコスパがいいのはこのクラスになるでしょう。これに生体やレイアウトに合わせてフィルターを設置するのですが、それはまた別の機会に紹介したいと思います。(すてきらんばい)




すてきらんばい